いのうえのうえんの井上広基さん(川崎市麻生区)

──年を通してどれくらいの野菜を作っていますか? また力を入れている野菜はありますか?

年間、80種類くらいを作っています。

力を入れている野菜は、「バターレタス」「コールラビ」「ぷちぷよ(ミニトマト)」でしょうか。

バターレタス:歯ざわりが軟らかく、グリーンがきれいな味わいのあるレタス。

コールラビ:食感は、カブや大根のようで、味はブロッコリーやキャベツのような野菜。生でも、炒め物や煮物でもおいしい。

ぷちぷよ:赤く艶があり、中の果肉が透けて見えるほど皮が薄く、指でつまむとぷよぷよしているのが大きな特徴のミニトマト

参考出典先:旬の食材百貨

──珍しい野菜もいろいろ作っていらっしゃいますね。それらの野菜はどうやって選ぶのですか?

雑誌で見かけたり、ネーミングをみて作る野菜を選ぶことがあります。「ぷちぷよ」や「ふわとろ長なす」はネーミングに惹かれました。

お店で料理を食べて美味しいと思ったもので、「なかなか手に入らない」と聞くと作ってみたくなります。やはり野菜も鮮度が命なので、お店からできる限り近い農園で作ってお届けしたいとも感じています。

──1つの野菜でも複数の種類を作られていますが、理由はありますか?

レタスやナス、トマトなど多品種で作っている理由は、例えばサラダにしたときに、プレートにいろんな野菜で彩りを楽しんでいただきたいのと、ひとつひとつの味や食感、形が違うので、いのうえのうえんで完結できるようなサラダプレートが作れたらと考えています。赤い葉っぱは彩りに、少し苦味のある葉っぱは味全体を引き締めてくれますよね。

──井上さんのインスタグラム(以下:インスタ )が話題になっていますが、本当に写真がきれいですね。なぜ始められたのですか?

野菜の違う魅力を伝えられたらと始めました。いまはフォロワーも少しずつですが増えて、いろいろな人がみてくださったりして、うれしく思っています。

インスタがきっかけで「この野菜はありますか?」とレストランなどから問い合わせをいただくこともあります。

──今年(2020年)のコロナウィルス感染拡大による影響はいかがでしたか?

これまで味わったことのない状況でした。

自粛を余儀なくされ、飲食店さんに卸している野菜もあるので、はじめはどうなるんだろうと思っていましたが、家でご飯を食べるからか、直売所へのお客さんは以前よりも増えましたね。

また、「困っていない?」と連絡をいただくこともあり、身近な人がたくさん買ってくれていました。地元でやっていてよかったと思います。これからも地元を大切にしていきたいですね。

──野菜を作っていて、嬉しいことはありますか?

多品種の野菜を作っているのは、飲食さんやお客さんが求めてくれているのもあるのですが、「なにこれ?」と言われるのがうれしいんですよね。

ぷちぷよを食べて、「ミニトマトの概念が変わった」みたいなことを言われるのも喜びのひとつです。先日も「ナスが食べれない娘が食べられるようになった!」と言ってくれたお母さんがいて、作ってよかったな〜と思いました。

野菜を使った布染めのワークショップでは地元の方に大勢参加してもらえました。

──農園での収穫体験や、野菜を使ったワークショップなどに協力されていますが、イベントをしてみていかがでしたか?

はい、収穫体験では農園を知ってもらうきっかけにもなり、楽しかったです。「野菜を買う人が、普段どんなことを思っているのかな?」というのを知ることもできましたし。

地元の会館で開催した野菜の布染めやしょうがの葉の紙すきなどのワークショップは、準備は大変だったけれど、自分自身の勉強にもなりましたし、そこから繋がるご縁もありました。

──お忙しいと思いますが、普段の生活での癒しはありますか?

キャンプやBBQをしている時、癒やしというか、リセットできますね。自分の中でも区切りが付けられる感じです。

またちょっと変わった植物も好きなんです。野菜と違って成長が遅く、その変化も読めないところがありますし。そういった植物を眺めたり手入れしているときは癒されていますね。

新百合ヶ丘のパン屋nichinichiさんではいのうえのうえんさんの野菜を使ったパンを販売しています。

──いのうえのうえんさんは、飲食店さんとコラボを多くされてますよね。

そうですね。Café&Meal MUJI(OPA新百合ヶ丘店)では、季節のデリメニューの何品かにはうちの野菜を使ってもらっています。今の時期は、トマト、島オクラ、なす、きゅうりなどです。

新百合ヶ丘のパン屋nichinichiさんでは、うちの野菜を使ったパンの販売や、不定期ですが店舗で野菜を販売してもらったり、コラボでイベントも開催しています。

──今後の展望があったら教えてください。

これまでもいろいろなご縁で、野菜を通して知り合った方々と、楽しくお仕事をさせてもらってきました。

いのうえのうえんのロゴも、そんな繋がりから生まれたんです。

コーヒー屋の友人から、聖蹟桜ヶ丘で朝市をやりたいから手伝ってくれないかと声をかけられて。主催者の方の旦那さんが、デザイナーさんで、農園の名前を付けた方がいいというので、作っていただきました。今も定期的にこの「SAISEKI ASAICHI」で野菜を販売しています。

その他にも、六二カンパニーさん*の野菜直売や、今はコロナの関係で開催を見合わせていますが、芝生の公園で行われるAir green*や新ゆりフェスティバルマルシェ*、などいろいろなご縁があります。

こうしたいという大きなビジョンではありませんが、人が好きなので、これからも、いろいろな職種の方と、野菜を通して繋がっていけたらと思っています。どこからでも頼ってもらえるような農家でありたいですね。

・六二カンパニー:二子玉川、日吉などで、信頼できる農家さんの野菜を仕入れて直売、野菜直売カフェ運営など
・Air green:日本一きれいな芝生の公園を目指し、ボランティアさんが手入れしている公園「新ゆりアートパークス」で行われているイベント
・しんゆりフェスティバル・マルシェ:小田急線・新百合ヶ丘駅にて定期開催する関東&沿線最大級のマルシェ

──どこで、いのうえのうえんさんの野菜を買えますか?

柿生野菜生産者直売会、イオン新百合ヶ丘店、イオン上麻生店、セレサモス麻生店などです。

農園情報

いのうえのうえん

住所:川崎市麻生区古沢

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